西鉄グランドホテルと大名小学校 
1970(昭和45)年頃 所蔵:益田啓一郎

 天神地区に隣接し「天神ビッグバン」における西のゲートとして「旧大名小学校跡地」に間もなく完成する「福岡大名ガーデンシティ」。藩政時代に福岡藩の重臣が住んだ旧大名町一帯は、福岡市の近代化において重要な役割を果たしてきました。
 今回の特集ページでは、旧大名小跡地や西鉄グランドホテルの土地の歴史と変遷を、資料や写真とともにご紹介します。

 
 

 
 
 
 

大名小学校と福博電気軌道の開業


 現在の赤坂門バス停そばで1873(明治6)年に開校した大名小学校(開校当時は大明小学校)が現在地へ新築移転したのは、日清戦争があった1894(明治27)年のことです。以来、福岡市内随一の名門校として2014(平成26)年に閉校となるまで、数多の優秀な卒業生を輩出し、地域のシンボルでした。
 現存する校舎は1929(昭和4)年に完成し、戦前の鉄筋コンクリート建築様式を知ることのできる、都心の貴重な近代建築です。2017(平成29)年からは官民共働型スタートアップ支援施設「FUKUOKA growth next」となり、旧大名小学校跡地を再開発して開業する「福岡大名ガーデンシティ」の歴史を伝える建物として、これからも地域の発展を見守り続けます。
 現在の明治通りが拡幅整備されて福博電気軌道(のちの西鉄福岡市内線貫通線)の路面電車が開業したのは、1910(明治43)年3月9日でした。万町(現在の西鉄グランドホテル前)交差点には万町(よろずまち)電停が設けられましたが、藩政時代の名残りの急なS 字カーブでは電車が頻繁に脱線したそうです。そのため、段階的にカーブを緩やかにする工事が行われました。
 
初代の大名小学校の記載がある福岡市全図(部分)。藩政時代の名残りで、現在の西鉄グランドホテル前交差点などは道路が直角に曲がっている。
福岡市全図 1891(明治24)年 所蔵:益田啓一郎
  現在地へ移転した後の大名小学校の記載がある福岡市街大地図(部分)肥前堀が埋めたてられ、明治通りに福博電気軌道(路面電車)が開通後である。 
福岡市街大地図 1915(大正4)年 所蔵:益田啓一郎
 
大名小学校西隣にできた鉱山監督署
1910(明治43)年頃 所蔵:益田啓一郎
  新築校舎が建った後の大名小学校全景(大名小学校記念帳より)
1935(昭和10)年 所蔵:益田啓一郎
 大名町や天神町は、藩政時代に福岡藩の重臣が住んだ町でした。明治時代になると旧藩士の多くはこの地を離れていきます。屋敷跡の区画には学校が出来たり、炭鉱経営者が本宅や別邸を構えていきました。
 大名小学校の西隣、旧土手町に福岡鉱山監督署が馬場新町(博多区祇園町付近)から新築移転してきたのは1910(明治43)年、福博電気軌道の開業直後です。明治通り沿いには福岡県庁や福岡市役所などもあり、界隈は官庁街として静かに発展を始めました。

 
西鉄社報「社屋地鎮祭」記事 
1948(昭和23)年2 月号
所蔵:西日本鉄道(株)
 
 
 
 

西日本鉄道の発足と大名町への本社移転


1942(昭和17)年9月22日、西日本鉄道が発足して本社は福岡市西新町に設けられました。1945(昭和20)年1月15日には本社を福岡市大名町の旧松本健次郎別邸(現在の西鉄グランドホテルの場所)に移転しますが、同年6月19日の福岡大空襲により全焼してしまいます。終戦後の1948(昭和23)年、跡地に木造の新社屋が立てられました。
 西鉄グランドホテルの敷地は、藩政時代に福岡藩の重臣・間島甚左衛門の屋敷があった場所です。間島家は黒田孝高(官兵衛)の弟・黒田修理亮利則(養心)を先祖に持つ御家門で、大名町と天神町の境に造られた防衛上の要衝(クランク)にあたる角地を与えられました。
 明治維新後、間島屋敷は安川・松本財閥を築いた松本潜(安川敬一郎の兄、松本健次郎の養父)別邸となります。潜は1901(明治34)年1月に別邸で亡くなり、西日本鉄道が本社を移転するまで健次郎が受け継いで所有していました。
 西鉄ライオンズが誕生すると、大名町の本社内には最初の球団事務所が置かれていました。豊田泰光さんの著書には当時の本社もたびたび登場します。西鉄ライオンズは1954(昭和29)年・1956(昭和31)年・1957(昭和32)年・1958(昭和33)年・1963(昭和38)年と5 回のリーグ優勝を遂げましたが、1963(昭和38)年以外の優勝パレードは大名町の本社を表敬訪問する形でコースが設定されていました。
 
大名町の西鉄本社
1965(昭和40)年頃 写真No. NKR726 /所蔵:西日本鉄道(株)
  戦前の住宅案内図「福岡市縦横詳細地図(1938 年度版)」より
大名エリア(部分)
 
福岡市内線の軌道移設工事風景
1958(昭和33)年頃 写真No. NTBR973 /所蔵:西日本鉄道(株)
  大名町の西鉄本社前を通過する西鉄ライオンズ優勝パレード
1956(昭和31)年11 月 写真No. NLL133 /所蔵:西日本鉄道(株)
   
大名町の旧西鉄本社前を通過する西鉄ライオンズ優勝パレード
1963(昭和38)年10 月 写真No. NLS490 /所蔵:西日本鉄道(株)
   

【関連ページ】   名場面1956 年初日本一西鉄ラインズアーカイブス
    西鉄ライオンズ優勝パレード他にしてつ画像ライブラリー

 
交通安全移動教室ポスター 
1968(昭和43)年頃 
所蔵:西日本鉄道(株)
 
 
 

大名小学校で交通安全教室


 自動車時代の到来をむかえて交通事故が多発しはじめた1960 年代、西鉄では1967(昭和42)年11月に「交通安全移動教室」専用バスを製作し、小中学校を巡って交通安全教室を開催しました。第1回の訪問地には大名小学校が選ばれ、記録写真が遺っています。
 
大名小学校での交通安全教室
1967(昭和42)年11 月 写真No. NKG014 /所蔵:西日本鉄道(株)
  大名小学校での交通安全教室
1967(昭和42)年11 月 写真No. NKG020 /所蔵:西日本鉄道(株)
 
大名小学校での交通安全教室
1967(昭和42)年11 月 写真No. NKG018 /所蔵:西日本鉄道(株)
  大名小学校での交通安全教室
1967(昭和42)年11 月 写真No. NKG019 /所蔵:西日本鉄道(株)
 
大名小学校での交通安全教室
1967(昭和42)年11 月 写真No. NKG016 /所蔵:西日本鉄道(株)
  大名小学校での交通安全教室
1967(昭和42)年11 月 写真No. NKG017 /所蔵:西日本鉄道(株)

【関連ページ】   大名小学校で交通安全教室にしてつ画像ライブラリー

 
ホテル建設工事 
1968(昭和43)年頃 写真No. HRNS026
所蔵:西日本鉄道(株)
 
にしてつニュースの 
「西鉄グランドホテル紹介」連載
 
1968(昭和43)年6 月~1969(昭和44)年 
所蔵:西日本鉄道(株)

西鉄グランドホテルの建設


 1960年代、福岡市は九州の経済・行政・文化の中心として、観光拠点としての役割を高めていました。増加する来福者に対して宿泊設備の不足が目立つようになり、本格的なホテル建設の要望が高まる中で西鉄は1967(昭和42)年5月に株式会社西鉄グランドホテルを設立。1968(昭和43)年5月1日、大名町の旧西鉄本社跡地で西鉄グランドホテル建設の立柱式が行われ、建設が本格化しました。
 
ホテル建設風景(基礎工事)右奥は現在の天神西通り
1968(昭和43)年頃 写真No. NZS085 /所蔵:西日本鉄道(株)
  ホテル建設風景(基礎工事) 
1968(昭和43)年頃 写真No. NZS079 /所蔵:西日本鉄道(株)
 
ホテル建設風景(基礎工事)後方は大名町教会
1968(昭和43)年頃 写真No. NZS081 /所蔵:西日本鉄道(株)
  ホテル建設風景(基礎工事)
1968(昭和43)年頃 写真No. NZS084 /所蔵:西日本鉄道(株)
 
ホテル建設工事
1968(昭和43)年頃 写真No. HRNS072 /所蔵:西日本鉄道(株)
  ホテル建設工事
1968(昭和43)年頃 写真No. HRNS030 /所蔵:西日本鉄道(株)


 
 
西鉄グランドホテル開業前の防火訓練
1969(昭和44)年4 月 
写真No. HRNS112/所蔵:西日本鉄道(株)
西鉄グランドホテル開業当時の全景
1969(昭和44)年 写真No. NKG104 
所蔵:西日本鉄道(株)

西鉄グランドホテルの開業


 1969(昭和44)年4月21日、福岡市内初の本格的な高級ホテルとして西鉄グランドホテルが開業しました。客室数は308室、レストラン・宴会場・結婚式場・テナント店舗・駐車場などを備えた鉄筋コンクリート造地下1階地上14階、高さ55mの堂々たる設備での登場でした。
 完成当時の福岡市は政令指定都市になる前で、人口も82万人余でしたが、新幹線が博多まで延伸開業した1975(昭和50)年には人口が100万人を突破。2023(令和5)年1月現在、当時の約2 倍となる人口163万人余の大都市へと成長を遂げていきました。
西鉄グランドホテル開業前の防火訓練 
1969(昭和44)年4 月 写真No. HRNS113 /所蔵:西日本鉄道(株)
 
西鉄グランドホテル開業当時の全景
1969(昭和44)年4 月 写真No. NKG107 /所蔵:西日本鉄道(株)
にしてつニュース「西鉄グランドホテル開業特集」 1969(昭和44)年5 月号/所蔵:西日本鉄道(株)
西鉄グランドホテル開業当時の館内風景(テラスラウンジ) 
1969(昭和44)年 写真No. NKG018 /所蔵:西日本鉄道(株)
 
西鉄グランドホテル開業当時の館内風景(フロント)
1969(昭和44)年 写真No. NKG019 /所蔵:西日本鉄道(株)
西鉄グランドホテル開業当時の館内風景(鳳凰の間) 
1969(昭和44)年 写真No. NKG016 /所蔵:西日本鉄道(株)
 
西鉄グランドホテル前電停からホテルを望む 
1975(昭和50)年頃 写真No. NKG017 /所蔵:西日本鉄道(株)
西鉄グランドホテル開業当時の館内風景(スカイシャトー) 
1969(昭和44)年 写真No. NKG016 /所蔵:西日本鉄道(株)
 
西鉄グランドホテル開業当時の館内風景(客室) 
1969(昭和44)年 写真No. NKG017 /所蔵:西日本鉄道(株)

 
オフィス・ホテル棟 
2023(令和5)年1 月 所蔵:西日本鉄道(株)
 
 
 

福岡大名ガーデンシティ開業


 福岡市の成長を見守ってきた西鉄グランドホテルの西隣、旧大名小学校跡地の再開発は2019(令和元)年7月8 日に着工しました。開発エリアの歴史を伝える鉄筋コンクリート造の南校舎(1929(昭和4)年築)がスタートアップ支援施設「Fukuoka Growth Next」として現在も活用され、2023(令和5)年6月には「福岡大名ガーデンシティ」の商業施設などが全面開業します。同年1月には、先行して旧大名小学校の校庭が「交流広場」として先行開放されました。
 地上25階・高さ約111mのオフィス・ホテル棟の17 階から24階までの全8フロアには「ザ・リッツ・カールトン福岡」が開業予定。歴史と格式を誇る西鉄グランドホテルと、九州初となるラグジュアリーホテルの存在は、成長を続ける福岡市の魅力を一層高めていくことでしょう。
東側から広場を望むイメージパース 所蔵:西日本鉄道(株)
   
旧校舎・コミュニティ棟 
2023(令和5)年1 月 所蔵:西日本鉄道(株)
  パブリックアート・遊具「大名の大狛犬」 
2023(令和5)年1 月 所蔵:西日本鉄道(株)
  コミュニティ棟・広場 
2023(令和5)年1 月 所蔵:西日本鉄道(株)

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