西鉄北九州線の混雑緩和を目的に終戦直後の1948(昭和23)年に製造された北九州線501号〜510号のうちの現存車両が広島電鉄602号である。翌1949(昭和24)年に製造された511号・512号(張り上げ屋根)とともに、運輸省規格型に沿ったもので他の事業者にも同型の車両が配置されている。
ボギー車としては大型の全長約13.6mの大型車体で竣功当初は両端に折り扉、中央部に両開き扉を設けた3扉で、扉間に5枚の上段固定下段上昇窓を配する外観。1953(昭和28)年に車体前部を絞る改造を行い、同時に中扉を埋め込んで両端2扉となった。
1970(昭和45)年以降の北九州線のワンマン化に際して、500形はワンマン化の対象から外れ、1975(昭和50)年11月の福岡市内線一部廃止にともなう車両の転入により500形は全車が運用離脱し、広島電鉄へ3両(501・502・504)が譲渡されて他は廃車となった。602号は唯一現存する北九州線500形車両である。
広島電鉄へ移籍した際、折戸両端扉を引戸前中扉に変更した上でワンマン化された。正面中央窓の固定、ライト取替えなどの改造も行われている。塗装は西鉄北九州線時代を思わせるツートンカラーであるが、西鉄時代のマルーンではなく1980年代の塗色が採用され、朝のラッシュ時を中心に運行されている。 |