西日本鉄道株式会社 創立110周年記念誌S
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87第5章 商業・ビジネス、2つの顔をもつ天神〈2001年~2018年〉都心部機能更新のための容積率特例制度 都心部再開発のネックの1つがビルの容積率であった。1973(昭和48)年の都市計画法改正で、福岡市の容積率が指定された。それ以前に完成したビルは、規定がなかったため指定容積率を超えるものが多数あった。 福岡市はMDC設立と同時期の2008(平成20)年8月、「福岡市都心部機能更新誘導方策」を策定した。同方策により、民間ビルの更新期を捉えた都市機能の強化と魅力づくりの推進に取り組みはじめた。 新たに導入された「まちづくり取組み評価」では、「九州・アジア」「環境」「魅力」「安全安心」「共働」の5つのテーマを評価項目に設定し、貢献度に応じて最大400%の容積率を緩和できる画期的な試みであった。 2012年1月の閣議で、福岡市は「特定都市再生緊急整備地域」に指定された。重点的に市街地を整備して都市の国際競争力の強化を図る地域のことである。これによって、官民協議会による計画作成、税制支援、手続きのワンストップ化、都市計画決定の迅速化が可能となった。天神一丁目南ブロック地区整備計画の策定 2012(平成24)年12月に地区計画(方針)を福岡市へ提案した後、2013年7月に福岡ビルを含む天神一丁目南ブロックでは、地区整備計画案の策定を目的としたまちづくり検討会を立ち上げた。検討会は西鉄が幹事を務め、福岡市にオブザーバー参加を要請し、112名の地権者で構成された。2014年6月まで8回開催され、ブロックの課題やまちづくりの方向性を議論し、地区整備計画案を策定した。また、福ビル街区(福岡ビル、天神コアビル、天神第一名店ビルを含む街区)では、検討会と並行して地権者勉強会を開催し、街区の将来像の検討を進め、建替えの機運醸成を図った。 検討会の地区整備計画案を受け、広場の設置や壁面後退、因幡町通り地下通路の整備など具体的なルールを定めること等により、福ビル街区では容積率が最大1400%に緩和される都市計画が2015年9月に福岡市により決定・告示された。 この都市計画の決定・告示により福岡ビル、天神コアビルの建替えの検討が本格化し、「グランドデザイン2009」でランドマークと位置づけた天神交差点の開発が動き出した。

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